氷の君に、恋の歌を。

誰かが息をのむ気配がした。
立ち止まる生徒が増える。
窓から顔を出す生徒までいる。

乃愛はただ歌った。
自分の中にある想いを、全部声に乗せるように。

歌い終わった瞬間、中庭はしばらく静まり返った。
それから次の瞬間、大きな拍手が湧き上がった。

「すご……」
「鳥肌立った」
「やっぱり森下さんって本物だ」

そんな声があちこちから聞こえてくる。

乃愛は息をのみながら、その景色を見つめた。
逃げたくてたまらなかった自分が、今はちゃんとここに立っている。