氷の君に、恋の歌を。

数日後。
昼休みの校内放送で、放送部から慌ただしい声が流れた。

「本日、放課後に予定していた中庭ミニステージですが、出演予定者の体調不良により一部内容を変更します」

教室が少しざわつく。
そのとき、担任が教室へ入ってきた。

「森下、ちょっといいか」

名前を呼ばれて、乃愛は目を丸くした。
聞けば、急きょミニステージで一曲だけ歌える生徒を探しているらしい。

「文化祭のときの歌、すごく評判だったんだ。無理にとは言わないが、どうだ」

教室中の視線が集まる。
前の乃愛なら、きっとすぐ下を向いていた。

けれど今は違う。
隣を見ると、蓮斗が静かに乃愛を見ていた。

何も言わない。
ただ、信じてるという目だけを向けてくれる。

乃愛は小さく息を吸った。

「……やってみたいです」