氷の君に、恋の歌を。

しばらく歩いたあと、蓮斗がふいに口を開いた。

「乃愛の歌、また聞きたい」

「え?」

「文化祭のあとも、ずっと残ってる」

その声は静かで、でもとてもやさしかった。

「俺だけじゃなくて、もっといろんなやつに届くべきだと思う」

乃愛は目を瞬かせる。
蓮斗が独占したがることはあっても、こんなふうに背中を押してくれるのがうれしかった。

「でも、まだ少しこわいよ」

正直に言うと、蓮斗は傘を持つ手を少しだけ握り直す。

「こわくてもいい」

「うん」

「その代わり、俺が隣にいる」

短いのに、まっすぐな言葉。
乃愛は胸の奥がじんと熱くなるのを感じながら、そっとうなずいた。