氷の君に、恋の歌を。

傘の下は思ったよりずっと狭かった。
肩が触れそうで、歩くたび制服の袖がかすかにこすれる。

雨の音が強いぶん、ふたりの沈黙まで近く感じる。

「もっとこっち」

蓮斗が乃愛の肩を軽く引き寄せた。

「っ……」

一気に距離が縮まって、乃愛の心臓が跳ねる。
こんなの、落ち着けるわけがない。

「近いよ……」

「濡れるだろ」

蓮斗は平然としているのに、耳だけ少し赤い。
それを見つけた瞬間、乃愛の胸が甘くくすぐられた。

「蓮斗くんも、照れてる?」

「乃愛ほどじゃない」

「やっぱり照れてるんじゃん」

小さく笑うと、蓮斗は少しだけ目を細めた。

「そんな余裕あるなら、もっと近くてもいいか」

「えっ」

さらに引き寄せられて、乃愛は蓮斗の腕に軽く触れる。
もう本当に近い。
雨の日のひんやりした空気の中で、彼の体温だけがはっきり伝わってくる。