氷の君に、恋の歌を。

その日は、一日がやけに長く感じた。

授業中も、休み時間も、乃愛の頭の中にはずっと朝のやり取りが残っていた。
昨日のキスを思い出していると伝えてしまったこと。
蓮斗も同じだと言ってくれたこと。
そして最後に、またしたいと平然と言われたこと。

思い出すたび、頬が熱くなる。

放課後のチャイムが鳴ると、乃愛は小さく息をのんだ。
鞄を持つ手にまで緊張がにじむ。

「乃愛、帰るぞ」

隣から落ちてきた低い声に、心臓が大きく跳ねた。

「う、うん」

短く返事をして立ち上がる。
でも教室を出るかと思ったのに、蓮斗はその場から動かなかった。

最後のクラスメイトたちが教室を出ていく。
笑い声が遠ざかり、扉が閉まる音がして、静けさが落ちる。

ふたりきり。
その事実を意識しただけで、胸が落ち着かない。