氷の君に、恋の歌を。

そこへ友達がやってきて、空気が少しだけ変わる。

「ねえねえ、今日の放課後さ」

話しかけられて、乃愛はあわてていつもの顔に戻ろうとする。
でも心臓はまだ全然落ち着かない。

隣を見ると、蓮斗はもういつもの静かな表情に戻っていた。
さっきまであんな甘いことを言っていた人と同じとは思えないくらいだ。

ずるい。
本当にずるい。

けれどふと机の下で、指先にやわらかなぬくもりが触れた。

びくっとして見ると、蓮斗の手がそっと乃愛の手に重なっていた。
みんなには見えないように。
でも、ちゃんと伝わるように。

乃愛の胸がきゅっとなる。

教室では普通の顔をしていても、ふたりだけの秘密はちゃんとここにある。
それがうれしくて、乃愛はこっそり指を握り返した。

すると蓮斗が、少しだけ目を細める。

その表情を見た瞬間、乃愛はまた思う。
きっと今日も、放課後が待ち遠しくてたまらない一日になるのだと。