氷の君に、恋の歌を。

一時間目が始まるまでの短い時間。
乃愛は必死に心を落ち着かせようとしていたけれど、隣の蓮斗を意識しないなんて無理だった。

ページをめくる指先。
静かな横顔。
ときどきふとこちらに向く視線。

その全部が気になって仕方ない。

「乃愛」

急に名前を呼ばれて、乃愛はびくっと肩を揺らした。

「は、はい」

「朝から変だぞ」

「へ、変じゃないよ」

「変だ」

きっぱり言われてしまう。
しかも蓮斗は少しかがんで、乃愛の顔をのぞきこむように見た。

「顔、赤い」

「っ……!」

言われた瞬間、さらに熱くなる。
こんなの、自分で認めてるようなものだ。

「だ、だって……」

「だって?」

蓮斗の声は静かなのに、どこか楽しそうだった。
絶対、わかってて聞いている。

乃愛は視線を机に落としながら、小さくつぶやく。

「昨日のこと、思い出すから……」

その瞬間、蓮斗がぴたりと動きを止めた。