氷の君に、恋の歌を。

教室には、もうふたりしかいなかった。
だからこそ、少しの沈黙さえ妙に意識してしまう。

蓮斗が椅子を引く音がして、次の瞬間には乃愛の机の横まで来ていた。

「今日、嫌だったか」

「え?」

「みんなの前で言ったこと」

低い声でそう聞かれて、乃愛は目を丸くする。

嫌なわけがない。
あんなに堂々と特別だと言ってもらえて、うれしくないはずがない。

「嫌じゃないよ」

乃愛は小さく首を振る。

「びっくりしたし、恥ずかしかったけど……すごくうれしかった」

そう答えると、蓮斗の瞳がやわらかくなる。

「ならよかった」

そのひと言に、乃愛の胸がじんわりあたたかくなった。

「私ね」

勇気を出して続ける。

「蓮斗くんが、あんなふうにまっすぐ言ってくれてうれしかったの。ちゃんと大事にされてるって思えたから」

言い終わるころには、顔がまた熱くなっていた。
でも蓮斗は視線をそらさず、まっすぐ乃愛を見つめている。

「大事にしてる」

「うん……」

「たぶん、乃愛が思ってるよりずっと」

その言葉が甘すぎて、息が苦しくなる。