氷の君に、恋の歌を。

放課後の教室は、昼間のにぎやかさが嘘みたいに静かだった。
窓の外からは部活の声がかすかに聞こえて、教室の中には夕日のやわらかな光が差しこんでいる。

乃愛は自分の席で鞄を整えながら、どこか落ち着かない気持ちで指先を動かしていた。

昼休み。
蓮斗がみんなの前で、乃愛は俺の恋人だと言った。

思い出すだけで頬が熱くなる。
しかもあのあと、クラスの子たちにたくさんからかわれて、恥ずかしさはまだ少しも消えていない。

「まだ赤い」

すぐ隣から声がして、乃愛はびくっと肩を揺らした。

「れ、蓮斗くん……!」

いつの間にか、帰ったと思っていた蓮斗がまだ席に座っていた。
頬杖をつきながら、静かに乃愛を見ている。

「帰ったんじゃなかったの?」

「乃愛を待ってた」

あまりにも自然に言うから、また心臓が跳ねる。

「そんなこと言わないで……」

「なんで」

「どきどきするから」

正直に言ってしまうと、蓮斗は少しだけ口元をやわらげた。

「知ってる」

「もう……」

からかわれている気もするのに、その声がやさしくて怒れない。