氷の君に、恋の歌を。

その日の放課後。
教室にはまだ、昼の騒ぎの余韻が残っていた。

「乃愛ちゃん、お幸せにね!」
「一宮くん、意外と重いタイプだったんだね!」

からかわれて、乃愛は照れながら笑うしかない。
でも、心の中はずっとあたたかかった。

帰り支度をしていると、隣で蓮斗が鞄を持ち上げる。

「帰るぞ」

「うん」

並んで教室を出る直前、乃愛はそっと彼の袖を引いた。

「どうした」

「あのね」

少しだけ勇気を出して、乃愛は蓮斗を見上げる。

「今日、うれしかった」

そのひと言に、蓮斗は目を細める。

「みんなの前で恋人だって言ってくれて」

「……当たり前だ」

「でも、すごくどきどきした」

正直に言うと、蓮斗は乃愛の頭をやさしく撫でた。

「これからもっと慣れろ」

「無理かも」

「無理でも慣れてもらう」

きっぱり言い切る声に、乃愛はくすっと笑う。

氷みたいに冷たかったはずの彼は、今ではこんなにもまっすぐに愛をくれる。
少し強引で、不器用で、でも誰よりやさしい恋人。

そんな蓮斗の隣を歩けることが、乃愛はたまらなく幸せだった。