氷の君に、恋の歌を。

悠真がいなくなっても、教室のざわめきは止まらなかった。

「え、いつから付き合ってるの!?」
「文化祭のとき!?」
「ていうか一宮くん、独占欲強すぎ!」

次々飛んでくる声に、乃愛はもう消えてしまいたいくらい恥ずかしい。
けれど、逃げるより先に蓮斗の手がそっと乃愛の肩を抱き寄せた。

「っ……!」

また教室がざわつく。

「ちょ、蓮斗くん!」

「昨日の時点で、こうなるのはわかってた」

「わかってたの!?」

「だから先に言った」

あまりにも落ち着いた声で言うから、乃愛は何も返せなくなる。

「乃愛」

耳元で名前を呼ばれて、びくっと肩が揺れた。

「もう誰にも譲る気ないから」

そんなこと、みんなの前で言うなんて反則だ。

「……もう、恥ずかしいよ」

小さく抗議すると、蓮斗はほんの少しだけ笑った。

「顔、真っ赤」

「蓮斗くんのせいでしょ……」

乃愛がうつむくと、彼の指がそっと頬に触れる。
教室なのに。
みんながいるのに。
それでもやめないあたりが、本当にずるい。

「でも、嫌じゃない」

確かめるみたいに言われて、乃愛はさらに赤くなる。

嫌じゃない。
むしろうれしい。
自分が特別なんだと、こんなにもはっきり伝えてくれるから。

「……嫌じゃない」

小さく答えると、蓮斗の目がやわらいだ。

「ならいい」