氷の君に、恋の歌を。

昼休み。
乃愛が自分の席で友達と話していると、また別の男子がやってきた。

「森下さん、これ文化祭のお礼。差し入れ」

「えっ、そんな……」

受け取るべきか迷っていると、ふいにその手が止まる。
後ろから伸びた手が、乃愛の持とうとした箱を先に取ったからだ。

「気持ちだけで十分だ」

低くて静かな声。
教室の空気が一瞬で変わる。

振り返れば、そこには蓮斗が立っていた。
表情はいつも通り薄いのに、目だけが少し冷たい。

「一宮……」

男子は気まずそうに笑う。

「いや、別に変な意味じゃなくてさ」

「そうだとしても、困ってる」

きっぱり言い切る声に、乃愛の胸がどきっとする。

男子が去っていったあと、教室はひそひそとざわめいた。

「一宮くん、独占欲やばくない?」
「え、もしかして付き合ってる?」

その言葉に、乃愛の顔が一気に熱くなる。
まだみんなにはちゃんと言っていない。
けれど、蓮斗はまるで隠す気なんてないようだった。

「れ、蓮斗くん……」

小声で呼ぶと、彼は乃愛の手首をそっとつかむ。

「来い」

「えっ」

「少し話す」

有無を言わせない静かな強さで、乃愛はそのまま教室の外へ連れ出された。