氷の君に、恋の歌を。

発表が終わったあと、乃愛は学校中の注目を集めることになった。

「さっきの子、すごくなかった?」
「歌手みたいだった」
「一宮くんとの組み合わせ、やばい」

廊下を歩くだけで声が聞こえる。
恥ずかしい。
でも少しだけ、うれしい。

そんな中、悠真が人混みをかき分けてやってきた。

「森下さん、最高だった」

「朝比奈くん……ありがとう」

「うん。やっぱり君の歌、好きだな」

にこっと笑う悠真。
けれどその直後、蓮斗が当然のように乃愛の隣へ立つ。

「朝比奈」

「はいはい、わかってるよ」

悠真は苦笑しながら両手を上げた。

「もう邪魔しない。ていうか、完全に負けた」

「最初から勝負じゃない」

「言うねえ」

軽口をたたきながらも、悠真は最後に乃愛へやさしく笑いかけた。

「がんばってよ、森下さん」

「うん」

そう返すと、悠真は手を振って去っていく。
その背中を見送ってから、乃愛は隣の蓮斗を見た。

「朝比奈くん、いい人だったね」

「……まあな」

少し不満そうな返事に、乃愛はくすっと笑う。