【番外編】初恋が君に届くまで

(やっぱり空耳だったのか?)

急いでオムレツを食べて出勤するつむぎを玄関で見送ったあと、丈はまたしても物思いにふけっていた。

先ほどまで丈の腕の中で恥ずかしそうに乱れていたつむぎは、時折「んっ、綾瀬くん」と涙目で見上げてきたが、「丈くん」とは決して口にしなかった。

(空耳だろうな。それか『しょうくん』の聞き間違いとか……。えっ、誰だよ、しょうくんって?)

些細なことと思いつつ、気になると仕方なくなる。

(よし、今夜お酒を飲んでさり気なく本音を聞き出そう)

酔っ払ったつむぎなら、本音を口にしてくれる。

丈はなるべく早く仕事を終えて帰って来ようと、勤務時間を前倒しで出社することにした。