【番外編】初恋が君に届くまで

ひと晩中ベッドで互いを抱きしめ合い、愛を伝え合いながら、二人は何度も愛しい人の名を呼ぶ。

「つむぎ、好きだ」
「私も、丈くんが大好き」

込み上げる想いのまま何度も身体を重ね、やがて心地よい気だるさを感じながら丈はつむぎを抱き寄せた。

「つむぎ」
「なあに?」

サラサラとつむぎの髪を指でもてあそびながら、丈は切り出す。

「子ども、作ろうか」

え?と顔を上げた次の瞬間、つむぎは「うん!」と笑みを浮かべた。

その可愛らしさに丈も微笑む。

「楽しみだな。つむぎに似た女の子、来てくれるかな」
「綾瀬くんに似た、かっこよくて優しい男の子もほしいなあ」
「綾瀬くん?」
「あっ! えっと、丈くん」
「よろしい」

するとつむぎは天井を仰ぎ、ほわんと夢見心地になった。

「ねえ、綾瀬……丈くんは」
「なんですか? 綾瀬つむぎちゃん」

いたずらっぽく返すと、つむぎは両手で頬を押さえて視線をそらす。

「やだ、恥ずかしい。『綾瀬つむぎ』だって。でもいい名前、ふふっ。私、本当に綾瀬くんのお嫁さんにしてもらったんだなあ」

また『綾瀬くん』に戻ったが、言ってることが可愛いから許す。

「それで、俺がなに?」
「あ、うん。子ども、すぐに作っても……いい?」

そっと視線を上げて尋ねるつむぎに「もちろん」と頷いた。

「本当に? 私、なんとなく綾瀬……丈くんは、まだしばらくはいいって言うかと思ってたの」
「どうして?」
「だって男性の27歳っていったら、まだ若いでしょう?」
「世間一般はそうかもしれないけど、俺はすぐにでも愛するつむぎとの子どもがほしいよ。もちろん授かりものだからこればっかりはどうなるかわからないけど、つむぎに似た可愛い子がほしいんだ」

私も、とつむぎが笑顔になる。

「綾瀬……丈くんにそっくりな男の子がほしいの。小さい綾瀬、丈くん、可愛いだろうな」

丈は少し渋い顔になった。

「どうかした?」
「なんか、後退してる」
「え? なにが?」
「せっかく綾瀬くんから丈くんになったのに、今はフルネームになった」
「あっ……ごめんなさい。つい」

丈は身体を起こすとつむぎに覆いかぶさり、グッと顔を寄せる。

「ひゃっ! な、なに?」
「愛し合ってる時はちゃんと丈くんって呼んでくれた。もう一回聞かせて?」

そう言うと丈はつむぎに深く口づける。

「んっ、待って」
「待たないし待てない。それにつむぎも、早く赤ちゃんほしいだろ?」
「うん、ほしい」
「じゃあ赤ちゃんが来てくれるように、パパとママが仲良くしないとな」
「そっか、そうだね」

つむぎは丈の首の後ろに腕を回して引き寄せてから、丈にチュッとキスをした。

「……つむぎ」

火をつけられた丈はもう止まれない。

「好きだ、つむぎ」
「私も。丈くんが大好き」

名前を呼ばれた瞬間、丈の身体がグンと熱を持つ。

二人はまた溶けるほど互いを求め合い、その名をささやいて愛を深める。

そんな二人のもとに赤ちゃんが舞い降り、つむぎのお腹に小さな命として宿った。

二人がそれを知って喜び合うのは、もう少し先のこと……。

そしてその後も家族が増え、二人の幸せはいつまでもキラキラと輝き続けるのだった。

初恋よ、永遠に……

(完)