【番外編】初恋が君に届くまで

「お待たせいたしました。これより新郎新婦のお二人が装いも新たに入場いたします。どうぞ大きな拍手でお迎えください」

司会の言葉に皆はおしゃべりをやめて、後方の扉に注目す。

華やかな音楽が流れ、照明が絞られると、開いた扉からスポットライトを浴びた二人が姿を現した。

「わあっ、友ちゃんきれい! 岡田さんもかっこいいね」

つむぎは大きな拍手を送りながら、丈に笑いかける。

友美はワインレッドのマーメイドラインのドレスで、髪はサイドで1つに束ねて大人っぽく、岡田は光沢のあるブラックタキシードにワインレッドのネクタイを合わせていた。

腕を組んだ二人は深々とお辞儀をすると、スタッフから手渡された細長いキャンドルトーチを手に、ゲストのテーブルにキャンドルを灯していく。

つむはワクワクしながら二人が来るのを待ち、いざ順番になると、まるで芸能人に会えたかのように感激の面持ちになった。

「友ちゃん、すっごくきれいよ。おめでとう!」

つむぎが声をかけると、カメラマンにカシャカシャと写真を撮られていた友美が、ウインクで応えた。

ひゃあ、とつむぎは両手で頬を押さえたまま二人を見送る。

「友ちゃんもウインクできるんだね。岡田さんなんて両目どっちでもできるし。みんなすごいね」

そう言われて、丈もさり気なくつむぎにウインクしてみせた。

つむぎは真っ赤になって目を見開く。

うつむくと、小さな声でいつものひとり言を呟き始めた。

「反則だよ、綾瀬くん。かっこいい人はウインクしちゃダメ。息の根が止まっちゃうじゃない」

知らんぷりをしつつ、それは大変だと、丈は心の中でひとりごつ。

「みんなウインクできて、すてきだなあ。私、美人でもないしスタイルもよくないし、ウインクもできないのに、よく綾瀬くんに結婚してもらえたよね」

ウインクそんなに重要か?と、丈は吹き出しそうになった。

「綾瀬くんに捨てられたくない。ずっと綾瀬くんと一緒にいたいから、もっとちゃんと綾瀬くんに見合うようにがんばらないと。まずは、そう! 今夜必ずちゃんと言う。絶対だよ、私!」

拳を握りしめて気合いを入れるつむぎは、応援合戦をがんばっていた高校生の頃のよう。

もちろん丈はそんなつむぎが大好きだ。

思わずニヤけてから、待てよ?と真顔に戻った。

(今夜必ず言うって、もしや子作りのことか?)

結婚後、嫁としての責務を果たそうと真剣に考えているのかもしれない。

(そんなふうに重く捉えなくていいのに。俺はただ、つむぎがいてくれる毎日が愛おしくて幸せだ)

必要以上につむぎの負担にならないよう、子作りのことは自分から話を振ろうかと、丈はしばし考えを巡らせていた。