きみの居ない春を、まだ知らない






雨の日が嫌いだった


正確に言えば、雨の日になると思い出してしまうことが嫌いだった


小川玲奈は、駅へ向かう途中で空を見上げた


灰色の雲が、街の上を低く覆っている


天気予報では、雨は夜からだった


だから傘を持ってこなかった


「……最悪」


ぽつ、と頬に冷たいものが落ちた


一度気づいてしまえば、雨はあっという間だった


玲奈は鞄を頭の上に乗せて走った