総長の愛が、重すぎる

「そりゃうれしいだろ」

「ふふ」

「笑うな」

「だって珍しいから」

蓮は少し不満そうにしながらも、ひまりの肩を抱き寄せる。

前よりずっと自然で、でも前よりもっと大事にするみたいな抱き方だった。

「今日、何回も思った」

低い声が耳元に落ちる。

「おまえが俺の彼女なんだって、まだ信じられない」

ひまりは蓮の胸元にそっと寄りかかる。

制服越しに伝わる鼓動が、少し速い。

「私も」

「ひまりも?」

「うん。蓮がこんなにやさしいの、私だけなのかなって」

その言葉に、蓮の腕にこもる力が少し強くなる。

「当たり前」

「即答だね」

「おまえだけ特別」

胸の奥がじんわり熱くなる。

こんな言葉を、こんなふうに言ってくれる人はきっと他にいない。

そのとき、校庭の中央から歓声が上がった。

夜空に、最初の花火が咲く。

ぱっと開いた光がひまりの瞳に映って、思わず声がもれる。

「きれい……」

赤、青、金。

次々に開く花火が、夜の学校をやさしく照らしていく。

その光の中で、蓮は花火ではなくひまりを見ていた。

「蓮?」

名前を呼ぶと、蓮は少しかすれた声で言った。

「やばい」

「え」

「今日のおまえ、ずっと可愛かったけど、今が一番やばい」

花火の音に紛れそうな低い声なのに、ひまりの心にははっきり届く。

「そんなこと言わないで」

「無理」

蓮の指が、ひまりの頬にふれる。

夜風に冷えた肌に、その熱がよくわかった。

「キスしたい」

ひまりの鼓動が一気に跳ね上がる。

「……うん」

今度は、ちゃんと自分からうなずけた。

それを見た蓮の目が、どうしようもないくらい甘く細められる。

そっと顔が近づいてくる。

逃げたくない。

そう思いながら、ひまりは静かに目を閉じた。

花火がまたひとつ、大きく夜空に咲く。

その音に包まれるようにして、唇がやさしく重なった。

最初は触れるだけの、確かめるみたいなキス。

でも離れたあと、蓮はひまりを見つめたまま、額をこつんと合わせる。

「好き」

熱を含んだ声に、胸が苦しくなる。

「もう一回」

返事を待たずに重ねられた二度目のキスは、さっきより少し長かった。

やさしいのに、ひどく甘い。

大事にされているのが、触れ方だけでわかる。

ひまりの指が、ぎゅっと蓮の制服をつかむ。

すると蓮がさらにやわらかく抱き寄せた。

「ん……」

小さくこぼれた声に、蓮の呼吸が乱れる。

けれどそれ以上は急がず、ゆっくり唇を離した。

「ほんと、だめだ」

「何が……?」

「好きすぎる」

まっすぐすぎる言葉に、ひまりの目が揺れる。

蓮はひまりの額にもう一度口づけて、それから低くささやいた。

「この先も、何回でも言う」

花火の光が、蓮の横顔を照らす。

「おまえは俺の一番大事な子だ」

ひまりは胸がいっぱいになって、うまく言葉が出なかった。

だから代わりに、そっと蓮の肩に頭をあずける。

それだけで蓮は少し笑って、ひまりの髪をやさしくなでた。

夜空では最後の大きな花火が広がっていく。

にぎやかな後夜祭の音も、遠くの笑い声も、今はもうほとんど聞こえなかった。

ひまりの世界には、蓮のぬくもりと、重なる鼓動と、甘すぎるくらいの愛情だけがあった。

そしてひまりは知る。

怖いくらいまっすぐなこの人の愛に、これからもっと深く溺れていくのだと。