総長の愛が、重すぎる

文化祭の終わりを告げるアナウンスが流れるころには、空はすっかり夕暮れ色に染まっていた。

校庭では後夜祭の準備が進み、あちこちで笑い声が上がっている。

ひまりは教室の片づけを終えたあと、そっと窓の外を見た。

今日一日だけで、いろんなことがありすぎた。

メイド服のまま接客して、蓮に嫉妬されて、拓真が現れて、みんなの前で気持ちを言って。

思い出すだけで顔が熱くなる。

そのとき、教室の扉が静かに開いた。

「ひまり」

低くて、もう聞き慣れた声。

振り向くと、蓮が立っていた。

「片づけ終わったか」

「うん、今ちょうど」

「じゃあ行くぞ」

「後夜祭?」

「二人で見れるとこ」

さらっと言われて、ひまりの胸が大きく跳ねる。

蓮は近づいてくると、当たり前みたいにひまりの手を取った。

そのまま校舎の裏を通って、人の少ない特別棟の外階段へ連れていく。

校庭のにぎやかな音が少し遠くなる場所だった。

「ここなら静か」

蓮はそう言って、ひまりを自分の隣に座らせた。

少しひんやりしたコンクリートの段差に並んで腰かけると、下の校庭では後夜祭の音楽が流れ始める。

みんなが楽しそうにしているのが見えるのに、ここだけは別の世界みたいだった。

「総長なのに、みんなのとこ行かなくていいの?」

ひまりが聞くと、蓮は迷いなく答える。

「よくない」

「え」

「でも、おまえといるほうがいい」

真顔で言うから、ひまりはまた困ってしまう。

「そういうこと普通に言うよね」

「思ってるからな」

蓮はひまりの指先を自分の手の中で遊ばせながら、ふっと息を吐いた。

「今日、ほんとは何回も限界だった」

「うん……たぶん見ててわかった」

「メイド服、反則」

ひまりは思わず笑ってしまう。

すると蓮が、少しだけ目を細めた。

「その顔」

「え?」

「俺にだけ見せて」

やっぱり重い。

でも、その重さが今は愛おしく思えてしまう。

ひまりはそっと肩を寄せた。

それだけで、蓮の指がぴくりと動く。

「ひまり」

「蓮、今日ね」

「ん」

「私、うれしかった」

蓮が静かにひまりを見る。

ひまりは少し恥ずかしがりながらも、ちゃんと言葉にした。

「みんなの前で、彼女だって言ってくれたの」

その瞬間、蓮の目がやわらかくなる。

「当たり前だろ」

「でも、ちゃんと言われると違う」

「……そうか」

ひまりはこくんとうなずく。

「それに、私が好きって言ったとき、すごくうれしそうな顔してた」

蓮は一瞬黙って、それから少しだけ視線をそらした。