イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

長い沈黙のあと、湊がようやく言った。

「……勝手にいなくならない」

紬はゆっくり顔を上げる。

「ほんとに」

「うん」

「避けない?」

少しだけ間があってから、湊は小さくうなずいた。

「できるだけ、ちゃんと話す」

それは完璧な答えじゃない。
付き合おうという言葉でもない。
何もかも解決したわけでもない。

それでも今の紬には、その不器用な約束が、何より大切だった。

「じゃあ、今日は一緒に帰れる?」

そう聞くと、湊は目を細めた。
泣きそうで、少し笑っている顔だった。

「……五分だけ、とかじゃなくて?」

紬は涙をぬぐって笑う。

「できれば、駅まで」

「うん」

たったそのひと言で、胸の奥の冷たさが少しだけ溶けた。

並んで歩き出しても、すぐに元通りにはならない。
沈黙は多いし、痛みも残っている。
でも、隣にいるだけで救われるものがある。
それを紬はもう知っていた。

夕焼けの校門を出るころ、ふたりの影が少しだけ重なった。

恋人にはまだなれない。
未来もまだ不安だらけ。
それでも、完全に失わずにすんだことが、今日はただうれしかった。

そして紬は気づいていた。
この恋はここから、もっと泣ける。
好きだと知ったあとで、それでも簡単には結ばれない時間が、きっとふたりをもっと深くしていく。