イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

やがて彼は、諦めたみたいに小さく息を吐いた。

「この前、母さん倒れた」

紬は目を見開く。

「え」

「仕事先で。大きい病気じゃなかったけど、過労だって」

夕方の光が、急に冷たくなった気がした。

「それで、しばらく無理できないって言われて」

湊は淡々と話している。
でもその声の奥に、張りつめた疲れがあった。

「家のこと、前より増える。澪のこともある。夏休みも、多分ほとんど空かない」

紬は何も言えなかった。

「そんな状態で、白石にちゃんと向き合える自信ない」

その言葉は、拒絶ではなかった。
むしろ逆だった。
向き合いたいからこそ、向き合えない今が苦しい。
それがわかってしまうから、余計に泣きたくなる。

「会いたくないわけじゃない」

湊が続ける。

「むしろ、会いたい」

胸が痛い。