イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

花火はまだ続いていた。
光が夜空に咲いて、ふたりの間にも淡く落ちる。

湊が、そっと紬の手に触れた。

指先だけ。
確かめるみたいに、やさしく。

紬も逃げなかった。
むしろ、少しだけ近づけた。

恋人になったのかどうか、はっきりした言葉はまだない。
でも、たぶんもう気持ちは同じ場所にある。
同じなのに、未来への不安がそのまま残っている。

だからこそ、ただ甘いだけでは終われない。

「付き合おう」

その言葉を言いかけるより先に、湊は小さく首を振った。

「ちゃんと言うの、今じゃない気がする」

紬は少し驚いた。
けれど次の言葉で、理由がわかった。

「中途半端な覚悟で言いたくない」

花火の最後の大きな音が夜空に響いた。
光が消えたあと、一瞬だけ世界が暗くなる。

その暗さの中で、紬は思った。
この人はやっぱりやさしい。
やさしいから苦しい。
苦しいから、こんなにも好きになる。

「待つよ」

紬がそう言うと、湊は目を細めた。

「待たせたくないのに」

「それでも待つ」

「……うん」

それだけで十分だった。
今夜、ちゃんと気持ちは届いた。
でも同時に、これからの切なさも始まってしまった。

好きだと知ったあとの待つ時間は、きっと前よりもっと苦しい。
近いのに、まだ名前がない。
手は触れられるのに、未来は約束されていない。

それでも紬は、少しもしあわせだった。
こんなに泣きそうなのに、こんなにあたたかい夜は初めてだった。