ふたりで並んで歩く参道は、少し夢みたいだった。
射的の前で子どもが歓声を上げて、わたあめの袋が風に揺れて、遠くでは太鼓の音が響いている。
なのに、紬の世界は隣の湊だけでいっぱいだった。
「浴衣、似合う」
不意に言われて、紬は足を止めかけた。
「……ありがとう」
「朝顔、白石っぽい」
「どういう意味」
「きれいで、静かで、でもちゃんと目をひく」
その言い方がやさしすぎて、紬はもう顔を上げられなかった。
褒められるのがこんなに苦しいなんて知らなかった。
「朝比奈くんも」
「ん?」
「似合ってる」
湊は少しだけ目を細める。
「それだけ?」
「十分でしょ」
「もう少しほしい」
そんなことを言う彼がめずらしくて、紬は笑ってしまう。
「かっこいい」
小さく言うと、湊はほんの少しだけ照れたように視線をそらした。
その反応がうれしい。
でも同時に、こんな時間がずっと続くはずがないことも、どこかでわかっていた。
金魚すくいの屋台の前で、湊が足を止めた。
「やる?」
「え、無理」
「じゃあ見てて」
意外にも、湊は迷わずお金を払った。
しゃがみこんで水面を見つめる横顔は真剣で、紬は思わず見入ってしまう。
紙のポイはすぐ破れた。
「朝比奈くん、下手」
「知ってる」
「自信満々だったのに」
「白石が笑ったからいい」
そのひと言で、また心臓が跳ねる。
何気ない顔でそういうことを言うから、ずるい。
結局、店の人が小さな出目金を一匹おまけでくれた。
ビニール袋の中で揺れる赤い影を、ふたりでのぞきこむ。
「澪にあげたら喜びそう」
「うん。でも世話、結局俺がするやつ」
「ふふ」
笑いながらも、紬は少しだけ胸が痛んだ。
楽しい話の中にも、自然に湊の背負うものが混ざる。
それがもう、この人の日常なのだ。
射的の前で子どもが歓声を上げて、わたあめの袋が風に揺れて、遠くでは太鼓の音が響いている。
なのに、紬の世界は隣の湊だけでいっぱいだった。
「浴衣、似合う」
不意に言われて、紬は足を止めかけた。
「……ありがとう」
「朝顔、白石っぽい」
「どういう意味」
「きれいで、静かで、でもちゃんと目をひく」
その言い方がやさしすぎて、紬はもう顔を上げられなかった。
褒められるのがこんなに苦しいなんて知らなかった。
「朝比奈くんも」
「ん?」
「似合ってる」
湊は少しだけ目を細める。
「それだけ?」
「十分でしょ」
「もう少しほしい」
そんなことを言う彼がめずらしくて、紬は笑ってしまう。
「かっこいい」
小さく言うと、湊はほんの少しだけ照れたように視線をそらした。
その反応がうれしい。
でも同時に、こんな時間がずっと続くはずがないことも、どこかでわかっていた。
金魚すくいの屋台の前で、湊が足を止めた。
「やる?」
「え、無理」
「じゃあ見てて」
意外にも、湊は迷わずお金を払った。
しゃがみこんで水面を見つめる横顔は真剣で、紬は思わず見入ってしまう。
紙のポイはすぐ破れた。
「朝比奈くん、下手」
「知ってる」
「自信満々だったのに」
「白石が笑ったからいい」
そのひと言で、また心臓が跳ねる。
何気ない顔でそういうことを言うから、ずるい。
結局、店の人が小さな出目金を一匹おまけでくれた。
ビニール袋の中で揺れる赤い影を、ふたりでのぞきこむ。
「澪にあげたら喜びそう」
「うん。でも世話、結局俺がするやつ」
「ふふ」
笑いながらも、紬は少しだけ胸が痛んだ。
楽しい話の中にも、自然に湊の背負うものが混ざる。
それがもう、この人の日常なのだ。



