イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

「私、朝比奈くんのこと、ちゃんと大事にしたい」

声が震えた。
でも逃げたくなかった。

「だから、ひとりで決めないで」

ふたりのあいだに、長い沈黙が落ちる。
風だけが通り過ぎた。

やがて湊は、今にも泣きそうな目で笑った。

「白石って、ほんとずるい」

「朝比奈くんに言われたくない」

そう返すと、湊は少しだけ笑った。
その笑顔が戻ったことに、紬は泣きたくなるほど安心した。

けれど、この恋はまだ名前を持たない。
あと少しで触れられそうなのに、まだ届かない。

それでも今日、確かに知った。
自分だけじゃない。
湊も同じように揺れている。

その事実は、しあわせだった。
でも同じくらい、切なかった。