イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

階段の外から、遠くに昼休みの笑い声が聞こえる。
別の世界みたいだった。
みんなと同じ学校にいるのに、今ここだけ違う時間が流れている気がする。

「朝比奈くん」

「なに」

「無理しないでって言っても、するでしょ」

湊は少しだけ目を細める。

「するかも」

「じゃあ、せめて」

紬は勇気を出して続けた。

「つらいときは、ちゃんとつらいって言って」

しばらく沈黙が落ちた。

湊は空になりかけたお弁当箱を見つめたまま、低く言う。

「言ったら、困らせる」

「困らない」

「白石は困らなくても、俺が困る」

「なんで」

そこで初めて、湊は少し苦しそうに笑った。

「弱いとこ見せたら、たぶんもっと甘えたくなるから」

紬は息を止めた。

風が、窓のすき間を抜けていく。
光の中に舞うほこりまで見えるほど、時間がゆっくりになった気がした。