イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

湊はひと口ずつ、ゆっくり食べた。
大げさに褒めるわけではない。
でも、食べるたびに表情が少しずつほどけていく。

「おいしい」

そのひと言が、紬には何よりうれしかった。

「ほんと?」

「うん。ちゃんと、おいしい」

ちゃんと。
その言葉に、彼のまじめさが出ていて、紬はまた胸があたたかくなる。

「よかった」

「白石、自分のもあるのに俺の分まで作ったの」

「朝ちょっと早く起きただけ」

「眠くない?」

「少し」

「じゃあ余計だめじゃん」

そう言いながらも、湊の声はどこか甘かった。

「朝比奈くんのほうがだめでしょ。寝てない顔してる」

その瞬間、湊の箸がわずかに止まる。

言いすぎたかもしれない。
そう思ったけれど、紬は目をそらさなかった。

「昨日も遅かったの」

静かに聞くと、湊は窓の外に目を向けた。

「……うん」

「お母さん、遅いの」

「最近ずっと」

短い返事。
でも、その中に疲れがにじんでいた。

「澪はもう元気だけど、家のことは減らないから」

紬は自分のお弁当箱のふちを指でなぞる。
何か言いたい。
でも、軽い言葉では届かない気がする。