イケメン男子は、天然美少女を一途に溺愛中。

昼休みが始まると、教室はすぐにざわついた。
机を寄せる音。
購買へ走る男子の声。
窓際で笑うグループ。

その中で、湊は自分の席に座ったままだった。
机の上には、パックの飲み物だけがある。

やっぱり。
そう思った瞬間、紬は立ち上がっていた。

「朝比奈くん」

声をかけると、湊が顔を上げる。

「ん?」

紬は胸の前でお弁当袋をぎゅっと握った。
周りの空気が少しだけ遠のいた気がした。

「これ」

差し出すと、湊が目を見開く。

「……なに」

「お弁当」

「見ればわかる」

いつもの静かな返しなのに、今日は少しだけ戸惑いが混じっていた。

「朝比奈くん、最近ちゃんと食べてないでしょ」

そう言うと、湊はすぐに否定しなかった。
その沈黙が答えみたいだった。

「でも」

「いらないなら、いい」

引っ込めようとした手を、湊があわてて止める。

「いらないとは言ってない」

その仕草に、紬の胸が少しだけ熱くなる。

「じゃあ、食べて」

教室で渡すには少し恥ずかしくて、声が小さくなる。
けれど湊は、お弁当袋を受け取ったまま紬を見ていた。