青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

由紀の反応に救われた日から、彼女のことを考える時間が前よりも少しだけ増えた。

話が合って、気を遣わなくていい。
趣味も同じで、二人きりが苦にならない。

もはや観察対象じゃない。好きだと自覚するのに時間はかからなかった。

けれど自覚すると恐ろしい現実が待っていた。

由紀の好きな男のタイプは自分と真逆だったのだ。

初恋は星々の戦いに身を投じる若き青年だったという彼女は、今やビーチで監視員をするマッチョや、特殊隊員にありがちな筋骨隆々の俳優を褒めそやす。

せめてハイスクールでバスケやミュージカルなど青春に勤しむ彼をいいと言ってくれたらよかったのに、由紀はとにかく視覚の暴力を好んだ。

「無理やんか」

今まで気にしなかったが、そもそも高身長な彼女と並ぶ自分は見栄えが悪い。

牛乳飲んだら伸びるだろうか。

成長期がまだ来ていない事だけが唯一の希望で、そこに神頼みするしかないのだろうか。

外見で評価するのは無粋と恋をする前は信じていたが、恋に落ちた夏希は考えが180度変わった。

相手がどうこうじゃない、これは自分の問題だったのだと知った。

だから見た目が全てじゃないとか言った奴は半分間違っている。

「俺もあんな風になりたい」

由紀がその俳優を褒めるたび、悔しがって嫉妬の言葉が漏れた。

ないものねだりのままでは終わらせないぞと決意を込めて。

結局、高校に進学するまで身長も体格も変わらなかったが。

そして中学生卒業を控えた頃。

卒業間近の教室では、悟断罪劇以降からぱったりと消えていた“可愛い女子ランキング“が復活していた。

由紀を恐れる悟発案のものではなく、有象無象の恋バナから発祥したようだが……由紀の名前も上がっていた。

ランキング三位。

それは由紀に気がある男がそれだけ居たというアレだ。

以前と違って他人事に思えないそれに夏希はひとり発狂していた。

今回はバスの中でなく自室で。

くだらない。

由紀の言う通り、一番とか二番とか、本当にくだらない。

くだらないと切り捨てた時の熱量が今やまるで違う。

絶対間違っている。

「唯一無二やろ……」

ナンバリングなんて出席番号だけで十分だ。

「あ゛〜〜……撮らせてくれんかなぁ……」

ベッドに寝転がり考えた。

一緒に映画を作りたいと言ったら、由紀はこれからも自分に付き合ってくれるだろうか。

不自然でない理由を探しては、いや不自然だろと心の中で却下する。

そうしてウジウジしている間に卒業の日が来て、進学先が違う由紀とはそれっきりとなった。

あの時、勇気が出ていれば。

成長痛だけじゃない痛みと後悔を抱え、夢を握りしめて、夏希の高校生活が始まった。