青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

「――西条くん、ごめんね。急に呼び出して」

第一印象は勝ち組モデル。
そんな彼女、橘由紀と……クラスで一番影響力の高い悪ふざけ常習犯ーー西条悟が二人きりでいるのを見かけたのは偶然だった。

放課後の静かな図書室。困ったことに入り口付近で立ち話をする二人を目撃し、夏希は図書室から出るに出れず立ち聞きしてしまった。

告白、ではなく断罪劇を。

「どしたん、由紀ちゃん。マジで告白?」

由紀に呼び出され、有頂天……もとい、そわそわした様子の悟はそんなことを言っていた。

冒頭のセリフに二人きりとくれば確かに期待してしまってもおかしくはない。

なにせ往々にして「ごめんね。急に呼び出して……」に続くのはそういうロマンスシーンだ。

しかし悟の期待は呆気なく砕けてしまう。

「違うよ」

「違うん?」

「うん。可愛い女子ランキングとかくだらんことするの止めて欲しいなぁってお願いしたいだけやし。一番とか二番とか番号つけるの出席番号だけでよくない?」

「えっ……?」

突然なにを言い出したかと思えば、女子の番付を勝手にしている元凶への苦言だった。

悟は由紀を前に固まっている。
完全に想定外といった様子の絶句だった。

なるほどそっちのパターンか。

「なんか嫌やなって……西条くんって時代錯誤なん?」
「じだいさくご?俺が?」

「うん。別に頭ん中は自由やけど、みんなで娯楽にするんはどうなんかなぁ……暇なん?」

「いや……」
「じゃあ面白いと思っとるの?つまらんよ」

モデル女子は正義感あふれるヒーロー気質だった。

「いっ……いやぁー、あんなんただのネタやん?女子も楽しんどるし」

言い訳する悟の目は泳いでいて、上履きの先が何度も上下に揺れていた。

どうせ由紀は女子の代表とかで文句を言いにきたのだろう。人気者は大変だ。

その時はそんな風に決めつけた。
しかし次の瞬間、自分の色眼鏡もあっさり外される。

「そう?じゃあ私は嫌やから、私だけランキングから外しといて」

「えっ……」

由紀の行動原理は、なんか、ちょっと違っていたのだ。

「みんなのことは知らんから私のこと以外は好きにしてや」

「あぁ、うん….」

驚いた。
悟など呆然と頷くことしか出来ていない。

「じゃあよろしく。でも多分、こんなんしよったらモテんよ。言いたことはそれだけやから。時間取らせてごめんね」

「お、おう……」

正義のヒーロー気取りは撤回。
由紀は独善的ヒーローだった。

大勢の前で追求しないぐらいの配慮はするくせに、くだらないとはっきりと言ってしまう爽やかさ。

自分の居心地を守ることが最終目的のようで、その潔さが面白い。
これは今までになく興味深いものを観てしまった。そんな気がした。

由紀に対するフィルターが外れた瞬間だった。