青く、淡い、フィルターの向こう側  -あの頃、好きと言えなかった君と大学で再会した-

中学二年の新学期、学校の統合でクラスメイトが少し増えた。

中でも同じ響きの苗字の女子生徒ーー橘由紀はモデル並に背が高く、顔が小さいだのなんだの目立って、中学という青少年時代をひと足先に駆け抜けたような大人びた容姿で特にちやほやされていた。

「たちばなぁ!」

そう呼ばれて顔を上げると、だいたい彼女が横を通り過ぎてゆく。

だから嫌でも存在を認知させられた。

そんなクラスで人気の橘由紀と違って、夏希は同じ「たちばな」の響きを持つだけの透明人間。

いや、透明ではないか。
むしろ陰キャラとしっかりラベリングされていた。

その原因はおそらく、夏希が周囲と交流しないからだ。そうするに至ったきっかけは、大多数が選ぶことを自分は選べないことに気付いたから。

小学生の頃から、いつも二択を外してしまっては変な奴と言われてきた。

初めのうちは個性的と評価されていたことが、次第に変な子扱いになって、あぁなんかもういいやと結論付け交流する必要性を感じなくなった。

そして映画の世界に逃げ込んだ。

映画は誰にでもなれたし、どこにでも連れて行ってくれる。
なにより画面の奥の世界は自分よりずっと変な奴がいた。

友達を作るより、映画を作りたい。
いつしかそんなことを夢見るようになった。

学校は脚本を書くために知識を得る場で、休み時間は本から語彙を学び人間観察をする時間。

陰キャラと呼ばれ、気にならないわけではないが、数年限りの矜持よりもずっと優先すべきことがあった。

だから映画以外の誰かと関わり、まして恋をするなんて思いもしなかった。