父が本当に怒りたかった相手は誰なのか?

『お前は社会をナメている!男はすべてを犠牲にして家族のために働くものだ!』

僕を絶望に叩き落とした父を、決して許すことはできない。

が、今ようやくこの言葉を翻訳する余裕ができた。



―翻訳―

お願いだ…『男はすべてを犠牲にして家族のために働くべき』だと信じ込ませてくれ。

じゃないと、自分にウソをつき続けた人生そのものを否定することになる。

そんなの耐えられないんだ…!

頼むから、オレが隠してきた弱さを、これ以上掘り返さないでくれ。

弱い自分でいることを、今さら許すことができない。

だから目を背けていないと…どうにかなってしまいそうなんだ…!

――



「悪口とは自己紹介」だそうだ。

自分が認めたくないことを相手に見てしまった時、それを否定して心を保とうとする。

もしそうなら、父の罵声の正体は『悲鳴』

弱い自分も、刷り込まれた価値観に逆らう自分も、本当は認めたかったのに許せなかった。

そんな自分への怒りや、後悔や、無力感が、ぐちゃぐちゃになった悲鳴。

父が本当に怒りたかった相手は僕?祖父?それとも、自分自身?

父の『宛名のない悲鳴』は、決して癒えない傷を息子に遺した。

この傷を未来に連鎖させるか、乗り越えて人生の糧にするかは、これからの僕にかかっている。