父が本当に怒りたかった相手は誰なのか?

父はおそらく重度の自閉症スペクトラム(ASD)で、『人の話を聞く』『空気と文脈を読む』ことができない人だった。

さらに『男は強くあるべき』『家族を養ってこそ一人前』という昭和の常識を内面化していた。

父の父=祖父は家族を養うため、漁師や青函トンネルの工事に命がけで従事した。

そんな祖父の姿は、無意識に『男とはこう生きるべきだ』と、父に圧力をかけた。

そして『察する』ことができない父は、祖父の『べき思考』を高純度で受け入れてしまったんだろう。

だが、父が本当に生きたかった人生は、祖父とは違った。

仕事ばかりではなく、やりたいことがあったかもしれない。

結婚も子どもも望んでいなかったかもしれない。

結果的に父の人生は、祖父からの刷り込みや、昭和の常識に逆らえなかった。



父はおそらく、心の奥で煮えたぎる『闇』で爆発寸前だった。

「自分の本音に背いてレールに乗ってしまった後悔」

「常識や世間体に逆らう勇気がなかった自分への怒り」

「家族を養い、強い男を演じるために、隠し続けた弱さ」

なのに、目の前にいたのは、自分の美学に反する”弱い”息子。

『自分がこれだけ我慢して生きてきたのに、堂々と弱さを見せるなんて許せない!』

その思いが爆発したのが、あの罵声だったのでは?