君の才能ごと、独り占め

「嬉しいですけど、今はまだ」

そこまで言いかけたとき。

「話終わりましたか」

背後から落ちた低い声に、空気がぴんと張った。

振り向かなくてもわかる。
恒一くんだ。

先輩も少し苦笑して、視線を上げる。

「榊くん、だったよね」

「はい」

恒一くんは私の隣に立つ。
近い。
いつもより少しだけ、守るみたいな距離だった。

「橘さんに用があって」

先輩が言う。
すると恒一くんは静かな顔のまま返した。

「俺にもあります」

「……今?」

「今です」

あまりにも即答で、私は思わず恒一くんを見上げた。

先輩は空気を読んだらしく、困ったように笑う。

「そんなに警戒しなくても取らないよ」

その一言で、恒一くんの目がほんの少しだけ細くなった。

「取られる前提で話してません」

静かなのに、妙に圧がある。

私は慌てて口を開く。

「先輩、すみません。今はそういう予定、考えてなくて」

先輩は一瞬だけ驚いたあと、すぐに頷いた。

「そっか。ごめん、困らせたなら忘れて」

「いえ、ありがとうございました」