君の才能ごと、独り占め

そう言われてしまえば、私だって同じだった。

クールで、静かで、誰よりもまっすぐ。
私の才能ごと受け止めてくれるくせに、それでも独り占めしたいと言ってくれる。
そんな彼を、好きにならないでいるなんて最初から無理だったんだと思う。

階段の踊り場には、夕暮れの光がやわらかく差し込んでいる。
遠くで片づけの声がして、文化祭が終わっていく。

でも私の中では、今日がきっとひとつの始まりだった。

才能があるから見られる。
期待される。
憧れられる。

それはたぶん、これからも消えない。
けれどもう、それだけで苦しくはならない気がした。

私には、どんな私も見てくれる人がいる。

舞台の上で輝く私も。
緊張で手が冷たくなる私も。
周りの視線に少し怯える私も。
全部知ったうえで、好きだと言ってくれる人。

「帰ろうか」

私が言うと、恒一くんはまだ少し名残惜しそうだったけれど、小さく頷いた。

「ん」

階段を下りる前、彼がそっと私の手を取る。
恋人つなぎ。

校内にはまだ生徒が残っている。
誰かに見られるかもしれない。