君の才能ごと、独り占め

屋上前の踊り場に着くと、恒一くんはようやく足を止める。
そして振り返るなり、すぐに私を抱き寄せた。

「え、ちょっと」

「無理だった」

「何が」

「我慢」

その声が思ったより低くて、胸が大きく跳ねる。

「先輩のやつ」

ああ、やっぱりそれだ。

「断るつもりだったよ」

「知ってる」

「じゃあ」

「それでも嫌だった」

ぎゅっと抱きしめる力が少し強くなる。

「星音に話しかけるやつ多すぎ」

耳元の声が、甘いのに切実で、たまらなく愛しい。

「講堂のときからずっと落ち着かなかった。見られて、褒められて、誘われて」

「うん」

「わかってる。星音は悪くない」

「うん」

「でも、独り占めしたい」

その本音に、胸が熱くなる。

私は彼の制服をそっとつかんだ。

「していいよ」

抱きしめていた腕が、ぴくりと止まる。