「星音」
聞き慣れた低い声がして、顔を上げる。
控室のドアのところに、恒一くんが立っていた。
「来てくれたんだ」
「当たり前」
彼はそう言って私の前まで来ると、しゃがんで目線を合わせた。
周りには同じ出番待ちの生徒もいたけれど、今だけはその存在が遠くなる。
「顔色は悪くない」
「確認そこなんだ」
「大事だから」
「手、冷たいよ」
私が言うと、恒一くんは迷いなくその手で私の指先を包んだ。
ひんやりしていた手に、じんわり熱が移る。
「これで少しはまし」
「……みんな見てる」
「見せつけてるわけじゃない」
「でも十分目立ってるよ」
「星音が落ち着くならどうでもいい」
その答えに、胸の奥が甘く震えた。
恒一くんはほんの少しだけ私の手を握って、それから静かに言う。
「思い出して」
「何を?」
「昨日、一緒に弾いたときのこと」
私は小さく瞬いた。
「楽しかっただろ」
「……うん」
「今日もそれでいい。うまく弾こうとしなくていい」
彼の目は、まっすぐで、落ち着いていた。
「客席のことは気にするな。才能がどうとか、評価がどうとかもいらない」
そう言って、彼は少しだけ声をやわらげる。
聞き慣れた低い声がして、顔を上げる。
控室のドアのところに、恒一くんが立っていた。
「来てくれたんだ」
「当たり前」
彼はそう言って私の前まで来ると、しゃがんで目線を合わせた。
周りには同じ出番待ちの生徒もいたけれど、今だけはその存在が遠くなる。
「顔色は悪くない」
「確認そこなんだ」
「大事だから」
「手、冷たいよ」
私が言うと、恒一くんは迷いなくその手で私の指先を包んだ。
ひんやりしていた手に、じんわり熱が移る。
「これで少しはまし」
「……みんな見てる」
「見せつけてるわけじゃない」
「でも十分目立ってるよ」
「星音が落ち着くならどうでもいい」
その答えに、胸の奥が甘く震えた。
恒一くんはほんの少しだけ私の手を握って、それから静かに言う。
「思い出して」
「何を?」
「昨日、一緒に弾いたときのこと」
私は小さく瞬いた。
「楽しかっただろ」
「……うん」
「今日もそれでいい。うまく弾こうとしなくていい」
彼の目は、まっすぐで、落ち着いていた。
「客席のことは気にするな。才能がどうとか、評価がどうとかもいらない」
そう言って、彼は少しだけ声をやわらげる。



