君の才能ごと、独り占め

文化祭当日の朝。

校門をくぐった瞬間から、学校はもういつもと別世界だった。
飾り付けられたアーチ、にぎやかな声、色鮮やかなポスター。
空気まで浮き立っているみたいだった。

私は控室代わりの空き教室で制服のリボンを整えながら、小さく息を吐く。
手のひらが少し冷たい。

緊張している。
でも逃げたいわけじゃない。

そのとき、ドアが軽くノックされた。

「入るよ」

恒一くんの声。

「うん」

入ってきた彼は、私を見るなり少し黙った。

「……なに、その反応」

「いや」

「いや?」

「思ってた以上にかわいい」

朝から心臓に悪い。

「もう」

「ほんと」

彼は近づいてくると、誰にも見られないようにそっと私の髪を整えた。