君の才能ごと、独り占め

「取られちゃうかもよ」

「取らせない」

即答だった。

「星音が舞台の上でも下でも、最初に見るのは俺でいい」

胸が甘くなる。

「うん。約束したもんね」

文化祭前日。

校舎は色とりどりの装飾で一気に華やかになっていた。
廊下にはクラスごとのポスターが並び、体育館からはリハーサルの音が聞こえてくる。

放課後、最終確認のために教室へ残っていると、担任の先生が少し慌てた様子で入ってきた。

「大変だ、講堂プログラムに空きが出た」

「え?」

「本来出るはずだった外部発表の子が来られなくなって、十分ほど穴があいたんだ」

クラスのみんなが顔を見合わせる。

「どうするの?」

「何か埋めないとまずい?」

「講堂の流れが変になるかも」

その空気の中で、先生が言いにくそうにこちらを見た。

私は、その視線の意味をすぐに悟った。

「……橘さん、もし本当に無理じゃなければなんだけど」

胸がどくんと鳴る。

「ソロで一曲、弾けたりするかな」

教室が静まり返った。

たぶんみんなも同じことを思っている。
できるなら、これ以上ない目玉になる。
でも、それを私に頼んでいいのかもわからない。

私は立ち尽くしたまま、言葉を失った。