君の才能ごと、独り占め

練習が終わるころには日が傾いていて、教室にはオレンジ色の光が差していた。
他の子たちが片づけをしている中、私はピアノの鍵盤カバーを閉じる。

「おつかれ」

振り向くと、恒一くんが後ろに立っていた。

「見てたの?」

「最初から」

「え、緊張する」

「でも楽しそうだった」

私は少しだけ笑う。

「うん。ちょっとだけ、好きって気持ち戻ってきたかも」

その一言に、彼の表情がやわらいだ。

「よかった」

たった四文字なのに、そこに込められた安堵がわかる。
ずっと気にしてくれていたのだと伝わってきて、胸があたたかくなった。

「恒一くんのおかげ」

「俺は何もしてない」

「したよ。いっぱい」

そう言うと、彼は少し黙ってから、私の前髪にそっと触れた。
クラスメイトがまだ教室にいるから、ほんの一瞬だけ。

でもそれで十分、特別だった。

「本番も楽しみにしてる」

「見に来てくれるの?」

「最前列」

以前言っていた男子たちを思い出して、私はくすっと笑った。