君の才能ごと、独り占め

ホームルームが終わったあと、私はそっと振り返る。
恒一くんは席を立ちながら、ほんの少しだけ頷いた。

その小さな合図だけで、胸がいっぱいになった。

放課後の練習は、思ったより楽しかった。

朗読に合わせて静かな伴奏をつけるだけ。
コンクールみたいな難曲じゃない。
技術を見せつけるための演奏でもない。

みんなの空気に合わせて、場面の色を作るための音。

それが新鮮だった。

「橘さん、すごい」

「え、これだけでこんな雰囲気変わるの?」

「なんか一気に本物っぽい」

そんなふうに言われても、以前ほど身構えなかった。
褒め言葉が怖くない。

ただ、クラスのみんなとひとつのものを作っているのがうれしかった。