君の才能ごと、独り占め

恒一くんがこちらを見ていた。
助け舟を出すでもなく、代わりに断るでもなく。
ただ、私が自分で決めるのを待っている目だった。

守ってくれる。
でも奪わない。

そのやさしさが、背中を押してくれた。

私は息を吸って言う。

「簡単な伴奏なら、やります」

教室がぱっと明るくなる。

「ほんと?」

「助かる!」

「やったー!」

みんなの歓声に少し驚きながらも、不思議と前ほどは苦しくなかった。
期待されているのに、押しつぶされる感じがしない。

たぶん、自分で選んだからだ。