君の才能ごと、独り占め

文化祭本番まで、残り二週間。

二年三組の音楽喫茶は順調に準備が進んでいた。
看板作り、衣装決め、タイムテーブル調整。放課後の教室は毎日にぎやかで、文化祭ムードが高まっていく。

そんな中、クラスの演奏枠が少しずつ埋まっていった。
軽音部のバンド、アコースティックギターの弾き語り、フルートの二重奏。

そしてある日、担任の先生が困った顔で言った。

「ピアノ伴奏の予定だった子が、家庭の都合で当日出られなくなっちゃって」

クラスがざわつく。

演劇風の朗読パートで、簡単な伴奏が必要だったらしい。

「どうしよう」

「誰か弾ける人いない?」

その沈黙の中で、何人かの視線がまた私へ向く。

私は気づかないふりをしようとした。
でも、今度は前みたいな苦しさだけではなかった。

音楽室で恒一くんに話したこと。
楽しい気持ちを取り戻せばいいと言われたこと。
最近、家でひとりで弾いているときだけは、少しずつ音が好きだと思えるようになってきたこと。

「橘さん」

担任の先生が遠慮がちに口を開く。

「もちろん無理ならいいんだけど」

そのとき、私はふと教室の後ろを見た。