君の才能ごと、独り占め

数日後、文化祭実行委員と各クラス代表が集まる全体会議が開かれた。
私はクラスの装飾担当として、資料運びの手伝いをしていた。

放課後の講堂は、人でいっぱいだった。
ざわめき、笑い声、紙の音。文化祭前特有の高揚感が漂っている。

「橘さん、こっちのパネル持ってもらえる?」

「うん、いいよ」

大きめの掲示パネルを抱えて移動しようとしたときだった。
通路の先から別のクラスの男子数人がやってくる。

「うわ、橘星音じゃん」

「マジで本物?」

「ピアノの子だよね。文化祭で弾いたりしないの?」

突然話しかけられ、私は立ち止まった。
悪い感じではない。ただ距離が近い。

「まだ決まってなくて」

笑って答えた瞬間、ひとりがさらに身を乗り出してくる。

「でも絶対見たいな。もし弾くなら最前列行く」

「連絡先とか聞いていい?」

その空気に、少しだけ困ってしまう。