君の才能ごと、独り占め

その日の放課後、クラスでは文化祭の出し物決めが行われた。

二年三組の候補は、喫茶店、お化け屋敷、演劇。
多数決の結果、最終的に選ばれたのは音楽喫茶だった。

普通の喫茶店に、クラスの有志による演奏タイムを組み込む企画らしい。

「絶対盛り上がるじゃん」

「軽音部の子もいるし、バイオリンできる子もいるし」

「え、じゃあ橘さんも……」

その一言で、教室の空気が少し変わる。

私はすぐに気づいて、机の上で指先をぎゅっと握った。

やっぱり、そうなる。

音楽という言葉が出れば、次に向くのは私だ。

「星音ちゃん、ピアノ弾けるんだよね」

「ていうか絶対すごいよね」

「一回だけでもやってくれたら目玉になるじゃん」

悪気がないのはわかる。
みんな楽しみにしているだけなのもわかる。

でも、その期待の目を向けられると、胸の奥が少し冷たくなる。

私は答えに迷った。

出たくない。
でもクラスの空気を壊したくない。

そうやっていつものように笑って引き受けてしまえば、きっと丸く収まる。

それでも、言葉が出なかった。

そのとき。

「無理に頼むなよ」

教室の後ろから、恒一くんの声がした。