君の才能ごと、独り占め

やっぱりこうなる。

最初から、普通にはなれない。

そんなふうに思っていたときだった。

「うるさい」

隣から、低く澄んだ声が落ちた。

教室がぴたりと静かになる。

みんなが一斉に彼を見る。私もつられるように顔を向けた。

彼は教科書に目を落としたまま、面倒そうに続けた。

「質問攻めにしたら困るだろ」

その言葉に、周りの子たちは気まずそうに笑って引き下がっていく。

私は少しだけ目を丸くした。

助けてもらった。

そう気づいた瞬間、彼がこちらを見た。

「大丈夫」

それは疑問ではなく確認みたいな言い方だった。

「……うん。ありがとう」

「別に」

素っ気ない返事。

だけど、その横顔は思ったより冷たくなかった。

始業のチャイムが鳴り、先生の話が始まる。私は教科書を開きながら、そっと隣の席の名札を見た。

榊 恒一。

その名前は、昼休みにはすぐに耳に入ってきた。

成績は学年トップ。生徒会副会長。運動部から助っ人を頼まれることもある。女子からの人気は高いけれど、本人は誰に対しても距離がある。クールで近寄りがたい人。話しかけづらいけど、なぜか惹かれる人。

そういう評判の男子だった。