君の才能ごと、独り占め

教室に入ると、いつものざわめきが広がっていた。
でも今日は、その中に少しだけ落ち着いて入っていける気がした。

自分の席へ向かう。
そして隣には、恒一くんがいた。

目が合った瞬間、彼が少しだけ表情をやわらげる。

「おはよう」

「おはよう」

いつもの挨拶。
でも今日は、そこに込められた意味が少し違う気がした。

席に着くと、恒一くんが小さな声で聞く。

「顔、昨日よりいい」

私は少しだけ笑った。

「ほんと?」

「うん」

少し迷ってから、私は机に鞄を置きながら言った。

「今朝、少しだけ弾いた」

その瞬間、恒一くんの目が静かに見開かれる。

「……そっか」

驚いているのに、大げさにはしない。
ただ、その一言にうれしさがちゃんと滲んでいた。

「ちょっとだけだけどね」

「それで十分」

昨日と同じ言葉。
でも今日は、その言葉がもっと深く心に入ってくる。

「恒一くん」

「なに」

「ありがとう」

「昨日も聞いた」

「今日のは、また別」

そう言うと、彼は少しだけ笑った。

「じゃあ、ちゃんと受け取る」