君の才能ごと、独り占め

学校へ行く前。
私は自分の部屋の隅に置かれた電子ピアノの前に立った。

長い間、ほとんど触っていなかった。
カバーの上に積もったわずかな埃が、時間の長さを教えてくる。

少しだけ迷ってから、私はそっとカバーを外した。

怖い。
まだ少し手が冷たい。
でも、昨日ほどじゃない。

椅子に座って、ゆっくり鍵盤に指を置く。

最初の一音は、ひどく小さかった。
でもちゃんと鳴った。

次の音。
その次の音。

途切れながらでも、音がつながっていく。

上手く弾こうとは思わなかった。
誰かに褒められようとも思わなかった。
ただ、自分で確かめたかった。

私はまだ、ピアノを嫌いになっていない。

そのことがわかっただけで、胸が少し熱くなる。

短いフレーズを弾き終えたあと、私は鍵盤の上に指を置いたまま小さく笑った。

完璧じゃない。
全然戻れてもいない。
それでも、これでよかった。