君の才能ごと、独り占め

翌朝、目が覚めた瞬間。
私は少しだけ、昨日までと違う気がした。

何かが大きく変わったわけじゃない。
ピアノへの怖さが全部消えたわけでもない。
すぐに昔みたいに弾ける自信がついたわけでもない。

それでも。

胸の奥にあった固いものが、少しだけやわらかくなっていた。

カーテンの隙間から朝の光が差し込む。
私はベッドの上でその光を見つめながら、ゆっくり息を吸った。

昨日、話せてよかった。
泣いてしまったのは恥ずかしかったけれど、それでもちゃんと話してよかったと思えた。

スマホを手に取る。
昨夜送ったメッセージの下に、恒一くんからの返信が来ていた。

話してくれてありがとう。無理しなくていい。でも、また星音の音が聞きたい。待ってる。

短い文章なのに、胸があたたかくなる。

待ってる。
急かさないその言葉が、恒一くんらしくて好きだなと思った。