君の才能ごと、独り占め

天井を見上げながら、私はもう一度今日のことを思い返す。

怖かったこと。
苦しかったこと。
話せてよかったこと。
抱きしめてもらって、少しだけ軽くなったこと。

全部ひっくるめて、今日はたぶん大事な日だった。

前みたいに弾けるかはわからない。
また舞台に立てるかもわからない。
でも、もうそれを考えるだけで全部苦しいわけじゃない。

誰かに期待されるからじゃなくて。
うまくやらなきゃいけないからでもなくて。
もしまた弾くなら、それは自分のためかもしれない。

その考えにたどりつけたことが、少しだけうれしかった。

スマホを手に取る。
画面には恒一くんとのやりとりが残っている。

少し迷ってから、私は短く打ちこんだ。

今日はありがとう。話せてよかった。

送信してしまうと、急にどきどきしてくる。
でも、さっきまでの不安な胸の音じゃない。

少しだけ前に進めたような、やわらかい鼓動だった。

窓の外はもう夜になっていた。
暗いのに、今日はほんの少しだけ先が見える気がする。

きっとまだ、ゆっくりでいい。
それでも前よりは、ちゃんと進んでいる。

星音はそう思いながら、スマホを胸の上に乗せて、静かに目を閉じた。