君の才能ごと、独り占め

駅が見えてきて、歩く速度が少しだけゆっくりになる。

離れたくない。
たぶんお互いに、少しだけそう思っている。

改札の手前で足を止めると、恒一くんがつないだ手をまだ離さないまま私を見る。

「今日は、来てよかった?」

突然の問いかけに、私は目を瞬いた。

「音楽室」

彼が静かに言い足す。

「無理させたかもって、少し思ってた」

その言葉に、胸がきゅっとなる。

そんなふうに気にしてくれていたんだと思うと、またあたたかくなる。

「ううん」

私は首を振る。

「行ってよかった」

そして、少しだけ勇気を出して続ける。

「ひとりだったら、たぶんまだ無理だった」

恒一くんの目がやわらぐ。

「……そっか」

「恒一くんがいたから、大丈夫だった」

そう言うと、彼は何か言いかけて、少しだけ黙った。
それから、照れたみたいに視線を少し外して言う。